IT技術の進化はビジネスに大きな変革をもたらしています。企業は競争優位性を維持するために、既存システムの刷新や最新技術を活用した新規開発など、多くのプロジェクトに取り組む必要性に迫られており、プロジェクトマネジメントの重要性がますます認知されるようになってきました。

プロジェクト成功の鍵を握るのが、PMO (Project Management Office) です。PMOは、プロジェクトを円滑に進めるための専門組織であり、その役割は多岐に渡ります。

PMOの多様な役割:規模感による違い

PMOと一言で言っても、企業の規模や組織構造、プロジェクト規模や特性によって、求められる役割は異なります。ここではPMOを幾つかの類型に分けて、それぞれの特徴と役割をご紹介します。

プロジェクト型(中小規模)

中小規模プロジェクトにおけるPMOは、主にプロジェクトマネージャー(PM)のサポート役としての役割を求められます。PMが本来の業務に集中できるように、PMOが雑多なプロジェクト管理の業務を引き受けることが多いです。スケジュール管理、進捗情報の収集と報告、議事録や資料の作成、ベンダーとのやり取り等、様々な業務を支援することになるでしょう。

PMにとって、プロジェクトを二人三脚で走る頼れるパートナーのようなイメージです。

中小規模のプロジェクトにおけるPMOの本来の役割は、前述の通りですが、もちろん例外もあります。

数人月~数十人月規模のプロジェクトを任されるプロジェクトマネージャー(PM)は、まだプロジェクト管理スキルが未熟であることも多いため、この規模のプロジェクトではPMOが実質的にPMの役割を果たすことが求められる場合があります。

そのような場合には、これらのPMO求人では報酬が高く設定されていることが多いです。

プロジェクト型(大規模)

大規模プロジェクトでは、関係者が多岐にわたり、プロジェクトは複雑化し、一筋縄ではいかないことが多くなります。

そのため、PMOにはより高度なプロジェクトマネジメントの知識や経験が求められます。PMと密接に連携し、プロジェクト計画の策定支援、リスク管理、進捗管理、品質管理、予算管理、課題管理、ステークホルダー管理など、プロジェクト全体を俯瞰し、適切な方向へ導くことが期待されます。

この場合、プロジェクトのどのフェーズから参画するのかも、要求されるスキルに影響します。立上げフェーズから参画する場合には、特にプロジェクト管理に関する深い知見が必要とされます。プロジェクトにおける様々なルールの策定やステークホルダーとの関係構築もその役割に含まれます。

プロジェクトマネジメント体制やプロセスが確立・充実した後のPMO求人では、定められたプロジェクト運営のプロセスを回す事務局的な役割が求められている場合もあります。

そのため、大規模プロジェクトだからといって、常に高度な役割が求められるわけではありません。

コーポレートにおけるPMO

ここで述べるコーポレートPMOとは、企業全体のプロジェクトマネジメント能力を向上させる組織のことを指します。

この組織には、プロジェクトマネジメントやシステム開発に関する標準化された方法論の策定・導入、PM人材の育成、プロジェクトポートフォリオ管理、PMO組織の運営などの役割が求められます。その目的は、企業が抱えるプロジェクトの成功率を向上させることにあります。

更に進んだPMO組織の役割としては、自社や他社のベストプラクティスの収集があります。その収集した内容を自社の方法論に落とし込むことで、企業がより洗練されたプロジェクト管理・運営ができるように導きます。

当然、求められる経験やスキルも高くなります。複数のプロジェクトにPMやPMOとして関わった実績が求められるでしょう。

PMOとして求められるスキル:IT知識とマネジメントスキル

PMOとして活躍するためには、多岐にわたる知識が必要です。ITの知識に加えて、プロジェクト管理のスキルや経験、さらに周囲と連携するための高いコミュニケーション能力も求められます。

基礎的なIT知識

ITプロジェクトに関わる以上は、システム開発の基礎知識やITトレンドに関する理解は必須です。PMや開発チームとの円滑にコミュニケーションを取り、技術的な課題やリスクを理解する上でも重要です。

プロジェクトマネジメント知識

プロジェクトマネジメントの知識を体系を理解し、プロジェクト計画、スコープ管理、スケジュール管理、コスト管理、リスク管理、品質管理、コミュニケーション管理、調達管理、ステークホルダー管理といったプロジェクトマネジメントの各プロセスを実践できる能力が求められます。

この知識の全体像を把握するためには、PMBOKなどが参考になるでしょう。一方で、実際のプロジェクトは、教科書通りには進まないことも多く、柔軟に状況に合わせたテーラリングができる能力が必要です。

コミュニケーション能力

PMや開発チーム、顧客、経営層、ベンダーなど、様々な関係者との橋渡し役となることが求められるため、仕事を進めていく上で、円滑なコミュニケーションが不可欠です。相手の立場や状況に応じて、的確な粒度で情報を伝え、合意形成を図っていく必要があり、高いコミュニケーション能力が求められます。

問題解決能力

プロジェクトは計画通りに進まないことが常であり、様々な問題が発生します。問題発生時には、状況を冷静に分析した上で、関係者と協力しながら解決策を導く必要があります。

継続的な学習意欲(と好奇心)

もっとも大事なのは、継続的な学習意欲と好奇心だと思っています。

IT技術は常に進化しており、プロジェクトマネジメントの手法にも様々なパターンがあります。常に最新の技術や知識を吸収し、自身のスキルを向上させるための継続的な学習意欲があれば、大概のことは後からでも何とかなるものです。

PMOとして成功するための戦略

次に、PMOとして成功するために取り組むべき戦略について述べていきます。

まず、PMOが効果的に機能するためには、企業がPMOを戦略的なパートナーと位置付け、その役割と責任、権限を適切に定義する必要があります。さらに、人的リソースに積極的に投資することが前提となります。

では、PMOとしての業務に携わる側としては、どのような取り組みをするべきでしょうか?プロフェッショナルとして成長し続けるために、以下の要素を具体的に取り組むことが重要です。

  • 専門性の向上:最新のIT技術やプロジェクトマネジメント手法を継続的に学習し、資格取得なども視野に入れながら、専門性を高める。
  • コミュニケーション能力の向上:関係者との信頼関係を築き、相手の立場や状況を理解したコミュニケーションを心がけ、円滑な情報共有、合意形成を図る。
  • 問題解決能力の向上:問題発生時に必要となる状況分析や論理的思考、問題解決の能力を高めるために、様々なプロジェクト事例に触れると共に、問題解決のための思考の枠組みを学ぶ。
  • ビジネス視点の習得:担当するプロジェクトが企業全体の戦略や事業目標にどのように貢献するのかを理解し、常にビジネス全体を意識した行動をとる。

キャリアパスと成長機会

PMOとしての経験は、あなたのキャリアを大きく広げるでしょう。PMOとして培われるスキルや知識は、様々な職種に応用が効くものが多いです。

PMOとしてのキャリアパスを考える際に、大きく二つの道があります。一つは、PMOとしての専門性を磨くこと、もう一つは他職種を視野に入れることです。

PMOとしての専門性を磨く

経験を積むことで、PMOのリーダーやマネージャー、特定分野のスペシャリストなど、様々なキャリアアップの道があります。

リーダーシップやマネジメント能力、PMOに関する深い知識と経験が身に付けば、PMOリーダー/マネージャーとして、複数のプロジェクトやPMOメンバーを統括する立場に進むことができるようになり、PMO全体の活動方針策定やメンバー育成、組織運営も担うようになるでしょう。

また、リスク管理や品質管理などの専門分野を深掘りし、特定分野のエキスパートとして活躍する道もあるでしょう。その場合には、その専門分野に関する深い知識と経験が必要となります。

PMO経験を活かせる他職種に挑戦する

プロジェクトマネジメントの知識や経験は、他の職種へのキャリチェンジにも有利に働きます。

例えば、PMOとしてプロジェクト全体を俯瞰して見た経験は、プロジェクトマネージャーとしてプロジェクトを成功に導くために大いに役立ちます。

また、IT知識やプロジェクトマネジメントの知識を活用し、企業のIT戦略策定やプロジェクト推進を支援する方向に進めば、ITコンサルタントとしての道が開けるでしょう。

その他、新規事業の立ち上げや既存事業の改善などにおいても、PMOで培う計画立案や推進の経験が活かされるはずです。

PMOに必要なスキルを身に付けるには?

PMOとして活躍していくためには、プロジェクト管理の基礎知識やシステム開発の進め方などの実践的な知識を習得していくことが重要です。

プロジェクト管理の基礎を学ぶ

プロジェクトマネジメントの全体像を把握するためには、PMBOKが指針となります。プロジェクトの計画から実行、監視、そして完了までの一連のプロセスを理解することは、PMOとして働く上での基礎となります。

PMBOKについては、入門書のような書籍を読むだけでなく、原典にあたることで色々と学びがあります。プロジェクトマネジメントに関する書籍は、最近も充実してきており、良書もありますので、近いうち、当サイトでも取り上げたいと思います。

また、Udemyのようなオンライン学習プラットフォームでプロジェクト管理講座を受講することも候補になりますし、企業や専門機関が開催する研修に参加できる機会があれば、できるだけ逃さないようにしましょう。

ITPro ToolBoxでは、システム開発の進め方やプロジェクト管理の基礎知識を分かりやすくまとめたナレッジベースを構築することを目標にしています。

これからPMOを目指す方だけでなく、既にPMOとして活躍されている方でも、より実践的な知識を身に付けたい方におすすめのサイトにしていきますので、ぜひご期待ください。

システム開発の進め方を理解する

PMOとしてITプロジェクトに関わる場合、システム開発の進め方に関する知識は必須です。要件定義、設計、開発、テスト、リリースといった各工程の内容や流れを理解することで、プロジェクトの進捗状況を適切に把握し、課題やリスクをいち早く察知することができます。

システム開発の入門書や開発手法に関する書籍、IT関連の専門誌などが情報源になります。また、この分野のオンライン講座は専門的なものが多いですが、入門レベルの講座や開発手法に関するものは、PMOとして働く方々にも役立ちます。

実際に開発プロジェクトに参画し、各工程を経験することが、より実践的な知識を身に付ける上での近道です。

ITPro ToolBoxでは、システム開発の進め方についての各工程の詳細や手法、ドキュメント例などを具体的に解説する予定です。

皆さまが実際に各工程を経験する中で、鑑として活用できるナレッジベースを目指していますので、是非、ご期待ください。

まとめ

PMOは、ITに関する専門知識や経験を活かしながら、プロジェクトの成功に貢献できる、非常にやりがいのある仕事です。成長のための戦略を理解し、積極的に行動することで、PMOとして成功し、自身のキャリアを大きく前進させることができるはずです。

この記事が皆さまの参考になれば幸いです。